hiyodori_patransの特許翻訳日記

特許翻訳のあれこれを綴るブログです。

特許翻訳者ってどんな人?

特許翻訳を始めてみたい方、どんなものか知りたい方のために、連載でお届けします。

 

目次はこちら → 特許翻訳ビギナースガイド

前回の記事はこちら →  特許翻訳の仕事はどこからくるのか

 

今回は、特許翻訳はどういう人がやっているのか?どうやって特許翻訳者になるのか?についてお話します。

 

前回 「特許翻訳の仕事はどこからくるのか 」

にも書きましたが、特許翻訳者は、特許事務所に勤めているか、翻訳会社に勤めているか、フリーランスのいずれかがほとんどかと思います。

 

どんな人がなっているか?

まず、フリーランスの場合

フリーになる前の経歴ですが、私の知る範囲では、

1.特許事務所に勤めていた

2.翻訳会社に勤めていた

3.メーカーの研究開発系に勤めていた

4.理系の学部・院卒

に当てはまることが多いようです。

 

他の分野の翻訳者は、通訳その他の仕事と掛け持ちされている方も多いと思いますが、特許翻訳と通訳と兼業されている方はごくわずかではないでしょうか。

特許翻訳翻訳者から名刺を頂いたら、「通訳・翻訳」と肩書に入っているので、「通訳もされているんですねー」と聞いてみると、「いえ、今はしていません」という答えを聞くことが多かったです。

 

そして翻訳専業であっても、特許翻訳専業の方も多い印象です。基本的に納期に追われるので、だいたい予定が入っていて他の分野の案件を入れにくいということもあるかもしれません。

 

翻訳者同士で話していると、「特許翻訳やっていると、他の翻訳できなくなってくるよね」という会話をすることがよくあります。

それだけ、言い回しが特殊なのか…。

 

上記1.~4.以外にも、翻訳スクールからというルートが今後もあり得るのかもしれません。昔は、特許翻訳を教えてくれる学校や講座というものがほとんどなく、特許事務所に入って実地で覚えていくことが一般的でした。

 

では、特許事務所にどうやって入るか

 

中途採用の活発な業界なので、普通に求人に応募することが可能です。

今から10年以上前だと、翻訳者も不足しており飽和状態になかったため、まだまだ初心者でも採用されることが多かったです。

が、今でも未経験でも採用しているところは探せばあるはずですし、いきなり未経験でフリーランスよりは道が開けているのではないでしょうか。

特許事務所って、普通の大きな会社と比べて、所長の好みが色濃く出るところなので、事務所との相性も大きいような気がします。

 

ちなみに、私は二か所で勤務経験があるのですが、一か所目の採用方法は、履歴書と面接のみでした。もう一か所は、半日缶詰になって、一般教養試験、翻訳試験、面接何回かを受けました。ここでの翻訳試験の内容は、特許ではなく一般的な文書で、きちんと正確に英語が読めているか、作文できるかが見られていたのでは、と推測します。

 

一方で、翻訳会社に登録するためのトライアルでは、特許明細書の翻訳以外の課題は見たことがありません。経歴が見られる場合が多いと思いますが、氏名と課題提出のみでトライアル合否が決まったこともあります。

 

そして、特許翻訳者は、理系出身か文系出身かというのもよく話題になります。

 

よくネットの掲示板で「高度な専門知識を持っていないと特許翻訳者になれない」とか、「英語が少々できたくらいでは到底無理」とかいう書き込みを見かけることがありますが、実際には、全員が「理系院卒で、英検1級、TOEIC900点以上で、深い専門知識を持っている」という条件にあてはまるわけではありません。

少なくとも、私は上記の条件に当てはまらないし、当てはまらなくても、特許翻訳者として活躍している人はたくさんいます。

 

自分の専門外のことであれば、技術内容を調べ、関連文献を読み漁り、ときに日本語の不備にウンウン悩みつつ、翻訳しているのが実情ではないでしょうか。

 

特許翻訳者のバックグラウンドはさまざま、理系の人とは限らない、資格が必須というわけでもない。しかし、特許翻訳をする適性はあるような気がします。

 

根気がある

体力がある

孤独に強い

勉強が好き

 

「根気がある」

とにかく特許翻訳は正確性が命。訳抜け、数字間違い、係り受け間違い厳禁。関連性のある文献を読みこなす根気。

かといって、細かい重要性の低いところにとらわれていると、気力も時間も持たないので、メリハリも大事。

 

「体力がある」

座り続けて頭だけを酷使するのも意外に体力がいります。

 

「孤独に強い」

人と話さずひたすら黙々と作業します。しかしこの適性はフリーランス翻訳者すべてに必要ですね。

 

「勉強が好き」

訳す文書は、とにかく原文も堅いので、決してワクワク面白く楽しいというわけではありません。それでも、黙々と読みこなし、理屈を理解することに面白さを見出せる人が向いているかなと思います。すっきり論旨の通った英文が書けると、なかなか爽快です。あと、わからないこと、知らないことを調べるのが好きとか。言い換えれば、この辺に特許翻訳の魅力があるのではないでしょうか。

 

 

 以上、私の限られた経験の中から、どんな人が特許翻訳者になっているのか、思い出しつつ書いてみました。

感想・ご質問もお待ちしております。↓ ↓

https://docs.google.com/forms/d/1BaITwV2RIw3lm4ZlC7YaabAdsPjyR8NbRDe8u8KC__4/edit

Wordのフォント文字化けにご注意

翻訳者が訳文をどのフォントで納品するかは、たいていお客様の指定がありますよね。

基本的に指定テンプレートに準じたフォントで納品するわけですが。

 

先日ちょっとしたアクシデントがありました。

 

ワード文書で納品したところ、「文字化けしているところがあります」とお客様からメールが。

「℃」が文字化けしてました。

私が使っているのは word 2016。

お客様のバージョンは word 2010。

フォントは Times New Roman

 

「℃」は word 2016 では、Times New Romanに装備されていますが、word 2010 には装備されていないよう。

 

ギリシャ文字などアルファベット以外の記号は、 symbolで入力するように客先より指定されることもあります。

ところが、最近 特にフォントについて指摘されることもあまりなかったので、「基本的に英文フォントで入力し全角が混じっていなければ大丈夫かな」、とすっかり油断しておりました。

 

 

そして、今回の件でどういう対応になったか。

「今後は word2010 で訳文を作成して納品して下さい」との指示でした。 

私の仕事用メインPCにインストールされているのは office 365、word 2016。

が、一台前の古いPCのセットアップ用DVDを捨てずにとってありました。

よかった!とOffice 2010とword 2010を現PCにインストールしました。

 

ここで、同じPCに違うバージョンの office をインストールできる場合とできない場合があるらしく、要注意です。

 

同じ PC にインストールできる Office 製品について - Microsoft Office 2016

 

英語の翻訳文書の場合、Times New Roman、Courier New、Century で納品することがほとんど。これらのフォントで入力する限りあまりトラブルはないと思いますが、新しいフォントを使うときは、納品先で読めない場合もあるので要注意です。

 

例えば、最近 英語版ワードのフォントのデフォルトはCalibri のようですが、これがリリースされたのは、2007年で Office 2007、Vistaからです。Calibri 以前は Times New Romanがデフォルト。

 

日本語版ワードでは、word 2016 から デフォルトのフォントが「游明朝」になっていますね。MS明朝の方が読みやすいので、このデフォルトがなかなかうっとうしく、私は既定をMS明朝に変更しています。

 

 

今回の教訓。

 

新しいバージョンから古いバージョンは読めるが、逆は無理。自分のPCをバージョンアップしても、古いPCや再インストールDVDはすぐに捨てない

 

新しいフォントは使用を控える。昔から存在するフォントを出来るだけ使う。

 

特許翻訳の仕事はどこからくるのか

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前回の記事はこちら → そもそも特許翻訳って何?

 

発明の特許をとるための「特許明細書の翻訳」。

この翻訳の仕事はどこからくるか?

いくつかのルートがあるのでご紹介します。

 

 

 

特許翻訳が翻訳者に依頼されるまでのルート

 

① 出願人 → 特許事務所 → 翻訳会社 → 翻訳者

② 出願人 → 特許事務所        → 翻訳者

③ 出願人 →         翻訳会社 → 翻訳者

④ 出願人 →              → 翻訳者

 

ここで、「出願人」とは?

特許を出願する人のことです。発明者自身が出願人になる場合もあるし、発明者が勤務している企業が出願人になる場合もあります。大学と企業が共同開発していて、大学名がになっていることもあります。

仕事で翻訳する案件は、企業が出願人の場合が大多数を占めています。

 

特許事務所」とは?

発明者自身が自分で特許庁に出願することもありますが、ほとんどの場合、代理人を立てます。出願人や発明者自身が、自分で明細書を書いて、書類を揃え、特許庁からの審査結果に対応するのはとても大変です。そのため、その道のプロに頼みます。これが「弁理士」です。弁理士さんが「特許事務所」を開業します。

特許事務所も規模が様々で、100人を超える大所帯から、一人で開業されている方もいらっしゃいます。

 

 

① 出願人 → 特許事務所 → 翻訳会社 → 翻訳者

 

翻訳者が翻訳の仕事をとるルートは、①と②の場合が多いのではないでしょうか。

 

①の翻訳者は、フリーランス、または翻訳会社に勤務している場合。

 

翻訳会社からフリーランスで翻訳の仕事を得るときは、トライアルを受け登録するのが一般的でしょう。

翻訳会社は、特許翻訳を専門にする会社も多いです。「特許部」のように、他のジャンルの翻訳とは別に部署を設けているところもあるようです。

 

翻訳会社内に翻訳者がいて翻訳をすることもあります。

 

翻訳会社の探し方は、ネットで検索することも可能ですし、↓ こちらでも定期的に翻訳会社からの求人があるようです。

 

アメリア」(会員制のため年会費が必要です)

https://www.amelia.ne.jp/userTop.do

 

② 出願人 → 特許事務所 → 翻訳者

 

②の翻訳者は、フリーランス、または特許事務所に勤務している場合。

 

フリーランスで特許事務所から直接仕事をとるには、紹介、求人への応募といった方法が考えられます。

 

特許事務所に就職・勤務するには、求人を見て応募することがほとんどではないでしょうか。

私は、大昔に特許事務所に就職したので、当時の求人媒体は新聞でしたが、今はネットでも探すことができます。

 

「パテントサロン」

http://www.patentsalon.com/jobs/offer/index.html

求人欄が充実していて翻訳者募集もよく見かけます。

 

ほとんどの特許事務所がホームページを持っていて、翻訳者を募集していることも多いので、この求人を見て直接応募することも可能です。

 

 ③ 出願人 → 翻訳会社 → 翻訳者 

 

③のルートで、特許事務所をすっとばしているのはなぜか?

 

実は、外国に出願する場合、

 

出願人 → 日本の特許事務所 → 海外の現地特許事務所 → 海外の特許庁

 

という経路をたどることが多く、経由するところが多い=それだけコストがかかるのです。なので、日本の特許事務所を介さずワンストップで外国へというわけです。

 

リーマンショック後、不況のため、仕事が減ったり単価が下がったりという翻訳者も多いと思います。その頃、コストを抑えたい企業のために生まれた新業態といえるのはないでしょうか。

 

④ 出願人 → 翻訳者

では、④の出願人から直接、翻訳者へと仕事が入る場合とは。

出願人が企業である場合、社内に知財部とか特許部とかいう部署があります。特許事務所に依頼せず、社内で手続きをするときはこの場合にあたります。

また、大企業で知財部から翻訳部門をスピンオフさせて別会社を作っていることもあるようです。こういった会社からの翻訳者の求人も目にすることがあります。

 

まとめ

 

このように、翻訳者の手元に翻訳書類が届くまで、様々なルートがあります。

上に簡単に紹介したように、このルートそれぞれから、仕事を得ることが可能です。

主なルートは、翻訳会社に応募・登録、特許事務所に就職または応募、ではないでしょうか。

 

次回「特許翻訳はどういう人がやっているのか/どうやって特許翻訳者になるのか」で、詳しくご紹介できればと思います。

  

そもそも特許翻訳って何?

 

特許翻訳を始めてみたい方、どんなものか知りたい方のために、連載でお届けします。

 

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さて、今回は「そもそも特許翻訳って何?」をお伝えしたいと思います。

その前に、特許とは何?いう話から始めます。

 

 

特許文書とは

「特許翻訳」とは、「特許文書」の翻訳のことです。

「特許文書」とは、「発明」の「特許」を取るために、特許庁に出す書類です。(他にもありますが)

 

「発明」と聞くと、エジソン白熱電球とかグラハム・ベルの電話とかが思い浮かびます。古いところでは「亀の子たわし」とか、最近ではアマゾンの「ワンクリック特許」とかもあります。

 

でも、実際にはそんな有名なものだけでなく、あらゆる製品に「発明」が詰まっています。例えば、自動車一台には何万もの(多分もっと)特許が含まれているといいます。

ちょっとここをこうしたら便利になる、とかそういう改良やアイデアも、どんどん特許を取ろうとするので、たくさん特許が存在するのです。

 

ということで、それに関わる特許文書もたくさん存在し、それを翻訳することが職業として(特許翻訳者)存在するのです。

 

翻訳がいつ必要となるか

では、その特許文書を翻訳する必要があるのはどんなときでしょうか。

例えば、日本で特許庁に出願した発明を他の国でも特許にしようとするときです。

 

特許庁に「これはこんな発明ですよ」と発明の内容を説明した文書を提出します。

この文書を「明細書」といいます。

特許庁では、審査官がその明細書を読んで、その「発明」に特許を付与していいかどうかを審査します。

 

海外の特許庁にも、この「明細書」を提出して、特許をとろうとする場合があります。

この「明細書」を翻訳するのが、特許翻訳の仕事のメインです。

 

特許翻訳の種類

特許翻訳の大きな市場は、日英・英日です。最近では中国の出願も増えていますが、これまでのメインの言語は、英語です。

ということを前提として、特許文書の翻訳も何種類かありますので、順にみていきます。

① 出願明細書(日英)

上に書いたような、日本で出願した発明を外国にも出願する場合です。

「明細書」を翻訳します。

「外国」とは、やはり米国が一番多く、次にヨーロッパです。どちらも英語の明細書が必要です。

他の外国出願もありますが、マイナーな言語だと現地の代理人のところで翻訳することが多いのではないでしょうか。

 

明細書の翻訳の長さですが、様々です。短いものだとA4の紙で10枚弱から、100枚を超えることもあります。分野では、バイオ系の明細書は長いと言われています。

仕上がりの英語ワード数でいうと、短いもので5000ワード弱、長めだと数万ワード超えることもあります。私のこれまでの感覚だと、1万数千ワードが多い印象ですが、分野や翻訳者によるかもしれません。

 

もし、特許翻訳者をめざすなら、この出願明細書を(どんな長さでも)訳すことが、一つのゴールだと思います。他の種類の特許文書もありますが、ここが一番単価も高く、需要も大きいところだからです。

 

ちなみに、外国の特許庁に提出するのにも期限があるので(法定期限)、納期は絶対順守です。

 

② 出願明細書(英日)

①の明細書(日英)は、日本から外国へ、ですが、その逆もあります。

外国の特許庁に出願した発明を日本の特許庁に出願する場合です。

言語としては、英語だけではないですが、例えば、他の言語だと英語に翻訳されたものがこちらに送られてくることが多いです。私は英日の場合しかよくわかりません。

 

(最近は、中国の出願件数が米国の出願件数を抜いたといいますから、翻訳需要は増えていると思いますが、残念ながら私に情報があまりないので、逆に知りたいくらいです。)

 

特許事務所に入った当初は、この英日を中心にやりました。

ここで覚えるたくさんの表現の蓄積が、日英翻訳をするときに生きてきます。

新米のときに訳すのだったら簡単かと思われそうですが、全然そんなことありません。

ただ、日本語から英語にするよりも、比較的直訳で不自然な訳でも意味が通じやすいというところはあるかもしれません。そして、ここで言い回しなど覚えていかないと、いきなり日英翻訳は難しいかなと思います。

 

特許翻訳者の中には、この英日翻訳をメインでしている方もいらっしゃるようです。日英も英日も両方、同じくらいされている方もいらっしゃるかもしれません。

私は、ほとんど日英のお仕事なので、意識して英語の明細書を読むように心がけています。

 

③ 中間書類

中間書類が何かっていう話ですが、まあ、特許庁に提出する出願明細書以外の書類もろもろ…という感じです。

 

特許庁に書類を出したら、もうおしまい!というわけではなく、審査が待っています。

 

その時に、外国の特許庁から来る手紙や、それに対する返事を訳すことがあります。

また、出願した発明に関係のありそうな文献を特許庁に出さなければならないことがあり、この文献を翻訳する仕事があります(引例翻訳)。

 

この翻訳は、明細書と違って短いことが多いです。数千ワードくらいとか。

多分、フリーランスになって翻訳会社に登録したら、この引例翻訳を最初に依頼されて様子を見られることも多いのではないでしょうか。

あるいは経験年数が短い場合、ここからスタートかもしれません。

 

文献の翻訳は、全文訳ではなく、部分訳の場合がほとんどなので、翻訳者の負担も少ないと思います。また、特許庁からの手紙や通知は、定型文句も多く、参照できる英文があったりするので、一から自分で訳すよりは楽かもしれません。

 

が、部分を訳すには、結局 全文を読む必要があり、対応する英文があるということは、それを読み込まなければなりません。で、時間がかかる割には自分の訳したものは、1000ワードもいかず… たいして稼げなかった!ということもあります。これは、フリーランスの場合ですが。

 

 

特許庁とやり取りする文書は、特許事務所の外に出ることが比較的少ないです。

なので、私(フリーランス)の場合、依頼自体も少ないのですが、話があったら積極的に受けています。どんなところを審査官は見ているのかな、ととっても参考になります。

また、訴訟系の文書だと、こんな一語一語で訴訟に発展するんだな~と読んでて結構面白いです。揚げ足取り的な感じもあり。

読みなれないと、何言ってるんだか全然わからん!という文書ですが…

 

まとめ

特許翻訳のメインは、特許庁に出す「明細書(発明を説明する文書)」の翻訳

仕事の量が多い(需要がある)のも、明細書の日英

 

次の記事はこちら → 特許翻訳の仕事はどこからくるのか