hiyodori_patransの特許翻訳日記

特許翻訳のあれこれを綴るブログです。

クレーム訳で気をつけること

特許翻訳の一番の難しさは、やはりクレーム訳にあるのではないでしょうか。

 

Faber も書いています。

 

Patent claim writing is an art, not a precise science. There is no correct or best claim. So long as the goals of claim writing are achieved, any claims will suffice. But, through practices of patent attorneys and agents, the Manual of Patent Examining Procedure (M.P.E.P) requirements of the Patent and Trademark Office, precedents in the district courts and the courts of appeals, what may be viewed as good claim form has evolved. 

 (§10:1 Writing Claims, Faber on Mchanics of Patent Claim Drafting

 

正しくベストというクレームはないが、クレームを書く目的が達せられるのであれば、どんなクレームでも事足りる。しかし、先例から良いとされるクレームの形はある、ということでしょうか。

 

そこで、これまでフィードバックを受けたことなどを踏まえて気をつけていることをまとめようと思います。

single sentence で書くとか、初出の単語を the とする、などの明らかな間違いを除いて、(審査官から)指摘を受けることがあるので気をつけたほうがいい、あるいは避けたほうがいいこととはなんでしょうか。

 

1. 不明確でないか

 

私たち特許翻訳者が、気をつけるべきは「明確でない(indefinite)」と審査官から拒絶されるような翻訳をしない、ということです。

 

・theren, thereof, thereto など

この"there"が指すものが分かりにくいので避けたほうがいいとされます。

とはいえ、a substrate having a conductor layer formed thereon のようなクレームもよくみられ、間違いではないと思いますが。

 

・助動詞(may, canなど)

「回転可能に」とか「回転できる」などのように「可能」や「できる」と原文にあると、 can rotate などとしがちですが、rotatable や configured to rotate にしたほうがよいようです。can や may を使うと、回転する場合もあれば回転しない場合もあると解釈され得るので不明確。

 

・if 節

「~する場合は」と原文にあるとき、if ... とすると、上の助動詞の問題と同じで、する場合もあればしない場合もあると解釈され得るので不明確。when 節で書いたほうがよい。

 

・略語

CPUとか、Cu や Al 等の元素名は、略語が間違いというわけではないが、スペルアウトしたほうがよい。クライアントにもよるので確認するか、コメントする。

 

しかし、上記の表現を含みながらも特許になっている明細書も多数あり、正解があるわけでなく、これもクライアントの意向と文脈によるところが難しいところです。

 

2. 機能的表現について

 

・whereby 節

クレームの限定とならないことがあるので、要注意。so that で言い換えるなど、他の表現で書けないか検討する。

 

・構成要素の書き方

~に接続されているや、~の上に形成されている、などの構造を表現するときは、X connected to や X formed on と書いて問題が生じることがない。機能を表す表現の場合は、クライアントにより指示が分かれることが多いので確認する。

例えば、configured to  do と書くのか、for doing と書くのか。means for は避けて「~部」と書いたほうがいいのか。

特に指示がない場合は、関係代名詞は避ける、構造表現は分詞( ... ing, ... ed)で書く、機能的な内容は configured to と書く、が無難ではないかと思われます。

 

 

他にも、択一的表現はどう書くか、など色々ありますね。

議論が分かれるところは最終的にクライアントの意向を確認するしかないと思います。