hiyodori_patransの特許翻訳日記

特許翻訳のあれこれを綴るブログです。

「~など」「等」はどう訳す

日本語の文章って「~など」を使うのが好きですよね。

特許明細書でも限定を避けるために、「~など」という表現がよく出てきます。

あまりに頻繁に出てくるので、訳に困ることも。

 

マーク・ピーターセンも著書に書いています。

“実際、日本人の書いた英文には、「~など」のつもりで、やたらとand so on を用いるという問題が目立つ

 確かに and so on 自体は、英語表現として存在しているのではあるが、言い回しとしてこれといった魅力のない言葉で、私はこれまでの長い人生で一度も使ったことはない。私の見る限り、and so on を多用するのは、英語教育を日本で受けた人だけである。”

   ( 引用:マーク・ピーターセン「実践 日本人の英語」より)

 

 

以前、勤務先の弁理士の先生が、翻訳者からあがってきた訳文を見て、

「and the like と and so on がひたすら訳してあって文字数を増やして翻訳代を稼ごうとしているとしか思えない」

と憤慨しているのを見たことがあります。

 

しかし、結論から言えば「など」は基本的には省略せず、日本語にあれば訳すほうがいいと思います。「など」にあまり意味がないときもありますが、本当に大事な場合も多いものです。訳抜けと指摘されても困りますし。

 

マーク・ピータンセンも、上記引用の後でさらに続けています。

 

”「大人のための」解決策

 とはいえ、学術論文の場合は、「フィーリングの<など>にはあたらない。」実際に役立つもう1つの「など」がある。それは、付けたほうが無難だという「など」だ。”

( 引用:マーク・ピーターセン「実践 日本人の英語」より)

 

 

特許文書もこの「付けたほうが無難」という場合にあたります。

件の弁理士の先生も、「など」をいちいち訳すなと言っているわけではなく、機械的かつ条件反射的に and the like を連発していることを批判していたのではないでしょうか。

 

というわけで、「など」が意味するところを吟味して訳し分けられるような、マーク・ピーターセン「大人のための解決策」を探りたいと思います。

 

 

such as

including

 

 「CD-ROM、DVDなどの記録媒体」のような場合は、such as や including でよいと思います。

 ただ、注意したいのが、such as や including の前にコンマが入らなければ限定的になるということ。特に化学案件で物質名を例示してある場合は要注意。化学系のスタイルガイドで有名な The ACS Style Guide に以下のように記載されています。

 

"Phrases introduced by "such as" or "inlcuding" can be restrictive (and thus not set off by commans) or nonrestrictive (and thus set off by commas).

 

    Potassium compounds such as KCl are strong electrolytes; other potassium compounds are weak electrolytes.

 

   Divalent metal ions, such as magnesium (II) and zinc (II), are located in the catalytic active sites of the enzymes.

 

  (引用: The ACS Style Guide, 3rd Edition より)

 

etc.

ネイティブの書いた英語明細書にもよくみられますが、正式文書では使わないほうがよいという説もあり、好みの分かれるところです。

 

and the like

類似のものを列挙するときに使います。

Oxford Advanced Learner's Dictionary によれば、 "a person or thing that is similar to another: jazz, rock and the like (= similar types of music)" となっています。

 

and other ...s

and others

例えば、「CD、DVDなどの媒体」というとき、「CD, DVD and other media」のように使います。

ただ、「CDやDVDなどに記録する」という日本語の場合、「媒体」にあたる単語が日文になく、「何も足さない何も引かない」の特許翻訳の原則に反するため、注意を要します。

上記の例ならいいのですが、「はんだ、接着剤などを用いて接合する」とあったらどうでしょう。

bonding using solder, adhesive and other materials とした場合、materials と書いてしまっているので、ねじや釘などの他の接合手段は除外されてしまうのでは?という疑問が生じます。単なる例示なので、あまり深く掘り下げなくてもよいのですが、基本的に問題となる不要な訳は入れないほうがいいと思います。

私も、and other ...s と訳して、and the like とクライアントに訂正されたことがあります。

 

ちなみに、and others を辞書で調べると、“(other) used as a noun to refer to people or organization" (Collins Cobuild English Language Dictionaryより)と定義してあり、人や組織に使われることが多いようです。

 

for example

例示するときに使える便利な表現。

名詞を列挙する場合と異なり、動詞で「~や、~などする」というときに使えます。

ただ、for example の前後にはカンマが必要なので、あまりに頻繁に出てくると読みにくいかも。

Use commas to set off the words "that is", "namely", and "for example" when they are followed by a word or list of words and not a clause

 

   Many antibiotics, for example, penicillins, cephalosporins, and vancomycin, intefere with bacterial peptidoglycan construction. 

(引用: The ACS Style Guide, 3rd Edition より)

 

 

Examples of ...  include ...

「媒体には、CD,DVDなどがある」のように、名詞を列挙している場合に使えるとても便利な表現。化学分野ではおなじみですね。

Examples of ... include, but not limited to, のように but not limited to を入れてさらに限定を避けることもできます。 

 

 

以上、「基本的に「など」「等」と書いてあれば必ず訳す、でも意味を考えて訳を変える」という対処法がベストと思われます。