hiyodori_patransの特許翻訳日記

特許翻訳のあれこれを綴るブログです。

翻訳業とワークライフバランス

大人気ブログ "Barking Up The Wrong Tree"の著書エリック・バーカー氏の本を読んでみました。

 

残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する

残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する

 

 

 

監訳が「言ってはいけない 残酷すぎる真実」の橘玲さんということで、このような邦題になったのですね。(原題は、"BARKING UP THE WRONG TREE - The Surprising Science Behind Why Everything You Know About Success is (Mostly) Wrong")

言ってはいけない」は確かに残酷な切り口もありましたが、「残酷すぎる成功法則」は、「残酷すぎる」ことはなく、楽しく読めました。

 

Barking Up The Wrong Tree - How to be awesome at life.

 

言ってはいけない 残酷すぎる真実 (新潮新書)

 

 

「成功するにはエリートコースを目指すべき?」「「いい人」は成功できない?」「勝者は決して諦めず、切り替えの早い者は勝てないのか?」などさまざまな切り口から「成功法則」を検証しています。

 

検証する上でのエビデンスやエピソードが膨大なため、それらの一つ一つが読み物として楽しい一方で、えっーと、これって何の話だったけ?と思うことも。しかし、詳細な事例の紹介のあとには、(大抵)4項目に絞って著者の結論(まとめ)が提示されるしくみ。こういう風にしてみたら?と読者へのアドバイスもあり、分厚い本ですが、楽しく読めます。

 

特に印象に残った章の感想。

 

・やりぬく力(グリット)について

「やりぬく力(グリット)」は成功のために必要である。グリットを持ち続けるために必要なのは「きっと、大丈夫」と自分に語りかけることができるかという心の習性だ、と私は解釈。これに絡めて、アウシュビッツ収容所の体験を著した「夜と霧」の作者フランクルのエピソードが心に残る。

 ある者は死に、ある者は生き残った。では、生き永らえたのは誰か?屈強な者は長く耐えられなかった。若者も耐えられなかった。勇ましい者も、従順な者もだめだった。

 自らも収容されていた精神科医ヴィクトール・フランクルはこの世で最も過酷な場所で、恐怖に耐えて生き続けられる者は、生きる意味を見出している者だと悟った。

(「残酷すぎる成功法則」より引用)

 

夜と霧――ドイツ強制収容所の体験記録

新版はこちら → 夜と霧 新版

 

グリット本 → 

やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける

 

私たちを前進させ続けてくれるのは、自分自身に語りかけるストーリーだ。ストーリーはときに崇高な真理かもしれないが、じつは、真実でなくても構わない場合も多い。

(「残酷すぎる成功法則」より引用)

 

また、やりぬくためには、

「工夫」が必要 → 「退屈」をなくそう! → 仕事にゲーム性をもたせる

と展開して、面白いゲームの4条件(勝てること、斬新な課題、目標、フィードバック)が挙げられている。

 

さて、これをどうやって仕事(私の場合、翻訳)に落とし込むかが問題。目標分量を設定し時間を測って達成できたら、自分にごほうびを与えるとか?新しい分野に目を向けるため、あるいは自分の実力を測るため、トライアルや試験を定期的に受けるとか?

 

・ワーク・ライフ・バランスについて

 

圧倒的な時間を投入すれば成功する確率は高まる。

その極端な例として、アインシュタインが挙げられている。アインシュタインは自分の思索に時間を費やすために家族を犠牲にしたという。アインシュタインは、「私は妻を、解雇できない雇い人として扱っている」と手紙に書いていたらしい。彼が妻に提示したという「契約書」も「これが自分の夫だったら」と考えるとぞっとする。

要は、あらゆるものを排除し持てる時間をすべて注げばそれだけ成功する、ということだが、それが幸せなのかはまた別だ。

 

そこで、バーカー氏が提案するのが、「自分にとっての成功とは何かを定義せよ」ということだ。成功が「達成不可能レベル」になっている今、また、ネットやらスマホやらの普及でいつでもどこでも際限なく仕事ができてしまう今、自分にとっての基準を持たなければならない、と。

 

さて、翻訳業のワークライフバランスはどうだろう。

 

少々古いが、手元にある2014年度の「通訳翻訳ジャーナル」に産業翻訳者の年収アンケート結果が載っていた。平均年収515万、ボリュームゾーンは300万~500万のようだ。回答数59人中、1000万以上は4人に過ぎない。

 

翻訳業(産業翻訳)は基本的にワード数で稼いでいくので、実際に処理量がなければ稼げない。金額だけを基準にして、これを成功と仮定すると、1500万とか2000万とか稼ぐには、単価を上げることももちろん重要だが、時間も相当に投入する必要があるのでは。単価をあげようが、効率をあげようが、ある程度は労働時間=収入になる。だからこそ、ワークライフバランスがとても重要になってくる。

「ここまで」という線引き(収入と時間の面で)をしていかないとひたすら仕事をする羽目になる。

 

一方で、翻訳業は「基本的には好きなことをしている」という側面もある。特に在宅の場合なりがちだが、仕事が日常生活に溶け込んでいても苦にならない。というか、仕事なのか趣味なのかよくわからないことも往々にしてある。単に稼ぎたいだけなら、もっと短時間で効率よく稼げる別の仕事がありそうだ。

 

家族との時間は大事にしたいが、まあそこそこは稼ぎたい、翻訳の仕事自体は適性もあっており好きだ、という私の場合のワークライフバランスとは。

「これ以上は働かない」(土日は休む、睡眠不足にならないようにする)と線引きをしつつ、分野を広げたり、新しいことを試したり、刺激となるような「ゲーム性をもたせる」こと ― 今のところは。

自分の都合を聞いて下さるクライアントにも感謝。